自然界の野生動物はみな同じ体型をしているのに、どうして人間は肥満になるのでしょうか?「いつまでもデブと思うなよ」の著者・岡田斗司夫氏は、「『太るような行動』を毎日、それも無意識にまで習慣化しているからこそ、人は太る」(同書p.104)と述べています。ならば問題はどうやって痩せるかということです。『太るような行動」をなかなか止められないのであれば、それは何故なのでしょうか?どうしてダイエットとは、こんなにも難しいのでしょうか?
その理由を一言で述べるなら、太っている人は(野生動物と違って)本能とは別の行動原理(=岡田氏の言葉を引用するならば「『欲望』という頭だけの食欲」(同p.179))に従って食事をしているから、ということになります。一体それはどういう状態を指しているのでしょうか?そして、改めて同じ問いを繰り返すならば、ではどうしたら痩せられるのでしょうか?
岡田氏自身がそうと明記している訳ではないのでここから先は個人的な解釈になりますが、「『欲望』という頭だけの食欲」のコントロールが難しいのは、それが「食事依存症」という心理状態に深く結び付いているからです。そして、太っている人は多かれ少なかれ「食事依存症」に陥っている可能性が高いため、痩せるためには依存症を「治療」することが必要になります。そうしない限り、何らかの方法で一時的に痩せることが出来ても、結局はリバウンドしてしまうのです。
で、岡田氏の考案した「レコーディング・ダイエット」が他のダイエット法と比べて圧倒的に優れている理由は、それが「依存症」を「治療」するための「行動療法」になっている点にあると個人的には思います。凡百のダイエット本のように単純に痩せることを目的とするのではなく、「依存症」を「治療」することで結果的に減量を達成し、なおかつその状態を維持する(=リバウンドしない)こと。これはダイエットの方法論として画期的な発想であり、一時期流行していた頃からすると最近では言及されることが少なくなりましたが、今でも信じて実行する価値が大いにあると思います。
・・・ということで、この先は「頭だけの食欲」とか「食事依存症」といった概念がどのようなものかを説明しつつ、自分のダイエット体験について書こうと思いますが、正直に申告すると、岡田氏が書いている内容以上に補足すべきことなど本質的には何もありません。なのでここからは、岡田氏の書物を読んで自分なりに解釈・実践したことを中心に述べてみます。なお、著作からの引用に際しては、「いつまでもデブと思うなよ」(新潮新書)には「新」、「レコーディング・ダイエット決定版」(文春文庫)には「文」と略称を付して、該当ページを示すことにします。
1.なぜ食べ過ぎてしまうのか?
まず最初に、自分は岡田氏と違って夜中などにお菓子の間食をする習慣がないにもかかわらず、何故つい食べ過ぎてしまうのかを省察することから始めました。その結果、(1)空腹で仕事に集中できなくなるのが不安だから(2)満腹状態が心地よく感じられるから、の二つがどうやら食べ過ぎの主な原因あるいは理由らしいと自己分析してみたのですが、その過程で、もしかすると自分は食事に対する依存症に陥っているのではないかと徐々に思い始めました。
なぜかと言うと、(1)=「その行為を続けるための言い訳をすること」と(2)=「その行為によって心地よい気分になること(脳内の報酬系の働きによるもの。後述)」というのは依存症の特徴だからです。さらに加えて、「その行為を中止または制限したいと思っているのに、それが上手くいかないこと」も典型的な特徴です(笑)。
そこでまず、(1)については常時ビスケットを手元に置いて対処することにしました。「集中力が低下するほどの空腹感に襲われたら、躊躇なくカロリーを補給すれば良いから」と自分に言い聞かせたわけです。心理的な言い訳に対しては、心理的な説得が一番ということですね(笑)。一日の摂取カロリーを1800以内に制限し、朝食&昼食をそれぞれ300〜500カロリーに減らしてしばらくの間は、「こんなに少ない量でお腹がもつかなぁ」などと不安になりました。が、結果として今に至るまで一度も非常用ビスケットを食べずに過ごしています。やはり「食べないと心配」というのは、食べたいがための自分に対する言い訳だったのだと、改めて納得しました(笑)。
ということで、(1)については比較的簡単にクリアできたのですが、厄介だったのは(2)でした。これについては項を改めて説明します。
2.「離脱症状」について
買い物やギャンブルなど、特定の行動に依存した状態を「行為依存症」といいます。その成立のメカニズムは、特定の行為を行うことで、中脳にある脳内報酬系という部分が刺激されて快の感覚が生じ、依存が形成されると考えられています。そして、ひとたび行為依存症になると、その行為が行われない状態が続くことによって不安症状やイライラ感に襲われるようになるのですが、これを「離脱症状」と呼びます。
もしかして自分は「食事依存症」なのではないかと考え始めてから岡田氏の本を再読してみると、彼が「75日目の変化」(新p.141)と名付けた状態は、「ホメオスタシス」(新p.145)の働きというよりも、この離脱症状が主な原因なのではないかと思うようになりました。実際、彼自身も「お酒やたばこの禁断症状もこんな感じだろうか」(新p.143)と述べています。
であるならば、これは相当やっかいな事態です。なぜなら、単純に身体がエネルギー不足になってイライラしているのではなく(自分ではそのように錯覚しているわけですが)、実際は脳が食事による快刺激を求めてイライラを煽っているからです。岡田氏の場合は75日目に強烈な離脱症状が生じたようですが、自分の場合は最初の3週間を過ぎた辺りで軽い症状が始まり、それから2ヶ月近く悩まされ続けました。
では、どうすればそれを克服できるのか?ヒントはやはり岡田氏の記述にあったのですが、この話を始めると長くなりますので、続きは次回に述べることにします。