2007/10/28

ひぐらしのなく頃に

少しばかり前のことですが、「サウンドノベル」という表現形式の存在を知りました。「ノベル」と称しながらその本質はコンピューターゲームであり、読者=プレイヤーはテキストを読み進めながら途中に設定された選択肢を選ぶことで物語の分岐を辿るというものだそうです。

実物に接したことがなく、「〜だそうだ」というほかないのは、このジャンルには所謂18禁の成人向けゲームが多く含まれているのみならず、売られているのが秋葉原のショップだったりするので、素人には近寄り難い雰囲気が濃厚(笑)だからです。

表題の「ひぐらしのなく頃に」は、「謎解き」を主題とした「サウンドノベル」のゲームの一つなのですが、2002年夏のコミックマーケットに同人ゲームとして発表されてから徐々に人気が高まり、昨年から漫画化・アニメ化がなされ、そして今年から小説化が開始され、さらに来年は映画化される予定という、メディアミックスの最先端的作品として広く受け入れられているものだそうです(18禁ではありません)。個人的にその物語構造に関心を持ち始めたのは最近のことなのですが、なかなかゲームの方には手が届かないので、小説版を読んでみました。

作者である「竜騎士07」氏は1973生まれの元公務員という経歴の持ち主なのですが、あるインタビューにて「私はアニメやゲームに触れているうちに、物語の作り手になって、人に伝えたいなと本気で考えるようになった。けれど、物語をどういう方法で伝えたらいいのかがわからなかった。イラストなのか、漫画なのか、それともゲームなのか……。」と語っています。
そして悩んだ結果、最終的に彼が自作の物語を伝えるために選んだ表現方法が「サウンドノベル」であり、その発表の場がコミケだった(笑)ということらしいのですが、自分の全く知らないところでそんな事態が進行していたという現実に、同時代の人間として軽い衝撃を覚えました。

しかしさらに衝撃的なのは、「ひぐらし」の「謎解き」において展開される推理の形式です。ミステリーをめぐる議論の一つにリアリズムの問題というものがあり、推理の整合性はリアリズムの水準で維持されるべきという人もいれば、フィクションとして成立すればOKという考え方もあって、なかなか微妙なテーマなのですが、「ひぐらし」はいわばイマジナリーな次元におけるメタ・レベルの整合性について言及しており、いわゆるメタ・ミステリーとは違った意味で、ある種の批評性を備えた作品になっているからです。
…とはいえ、表面的にはサブカルチャーの作品なので、『はふぅ〜、かぁいい〜』とか『大丈夫なのです。にぱ〜☆』といった台詞が延々と続き(苦笑)、この種のジャンルの初心者としては読み進めるのにそれなりの苦労が必要でした。